生体電気インピーダンス分析(BIA)技術の物理原理は数十年前から確立されていますが、新たに開発された体組成分析装置は依然として、エンジニアが夜も眠れなくなるくらい、同じ質問に答えなければなりません:測定結果は正確なのでしょうか?
技術原理が正しいからといって、すべての実装が信頼できるわけではありません。ステーキは強火で焼いて肉汁を閉じ込めるものという知識があるからといって、必ずしもステーキがゴムのような焼き上がりにならない保証はありません。それと同じことです。電極の設計、測定周波数、アルゴリズムの調整、異なる人種や体質への適用性……これらの微妙な違いが、最終的に測定品質に影響します。これが臨床検証がここまで重視される理由です。臨床検証は、実際の人体、実際の使用状況、厳密な統計手法を駆使することで、機器が「理論的に正しい」だけでなく、「実際に正確に測定できる」ことを証明してくれるのです。
我々は興友科技のポータブル体組成分析装置STARBIA201(以下SA201)を用いて臨床検証研究を実施しました。177名の台湾の健康な成人、年齢25歳から86歳、男性55名、女性122名を対象としました。被験者の体格指数(BMI)は13.52から39.59 kg/m²まで様々で、ちゃんと食事してますか?と聞きたくなるほどの痩せ型の方から、コンビニスイーツを少し控えた方がいいかも…というような肥満体の方まで、ほぼすべての体型をカバーしました。すべての被験者は、興友のSA201、市場で有名なInBody770、そして医療業界では体組成のゴールドスタンダードとして認められているDXA(二重エネルギーX線吸収測定法) の3種類の機器を使用して測定を受けた後、3つの測定結果を比較しました。
まず、SA201とInBody770で測定した総体水分量、細胞内水分量、細胞外水分量、腹部内臓脂肪面積、基礎代謝率の測定結果を比較しました。ピアソン相関係数(Pearsonʹs correlation coefficient)を用いて、2台の機器の測定結果が一致しているかを確認しました。
ピアソン相関係数 はrで表され、-1から1の間の値をとります。2つの連続変数間の関連性を記述するのに適しており、本研究では、この係数を用いて2台の機器の測定結果の一致度を評価しました。 r = 1は完全な正の相関を表し、2台の機器の測定結果が完璧に同方向に変化することを意味します。まさに双子レベルの一致度と言えるでしょう。r = -1は完全な負の相関を表し、2台の機器が極端に反対の結果を示し、測定結果が完全に逆の変化傾向を示すことを意味します。r = 0は両者に関連がないことを表します。相関係数が1に近いほど、2台の機器の測定結果の変化傾向がより一致していることを示します。
結果、総体水分量、細胞内水分量、腹部内臓脂肪面積、基礎代謝率の相関係数はすべて0.99に達し、細胞外水分量の相関係数も0.98でした。わかりやすく言えば:2台の機器の測定結果はほぼ完全に一致しています。額に入れて飾ってもいいほど見事な数値です。
次に、SA201とDXAで測定した体脂肪率、下肢筋肉量、四肢骨格筋量、四肢骨格筋量指数、全身骨ミネラル量、全身骨密度を比較しました。
DXA(二重エネルギーX線吸収測定法) は、2種類の異なるエネルギーのX線ビームを人体に照射し、組織によるX線吸収の程度の違いに基づいて体組成を区別します。骨格は密度が最も高く、最も多くのX線を吸収します。それに次ぐのが脂肪組織で、筋肉などの非脂肪組織の吸収は少なくなります。2種類のエネルギーのX線の透過率の差を比較することで、DXAはこれら3種類の組織の質量と分布を計算でき、測定誤差が小さく、繰り返し測定の変動性も低いのです。
当初DXAは骨密度測定、骨粗鬆症診断のために開発され、臨床医学で数十年使用されており、大量の研究データと使用経験が蓄積されています。その後、研究者たちはそれが体組成も正確に測定可能であることを発見し、徐々に体組成研究の参照標準となりました。相撲で例えるなら、DXAは体組成測定界の横綱のようなもので、自分の実力を証明したければ、横綱と対戦しなければなりません。
図/AI生成
結果、SA201とDXAがすべての指標で高い相関性を示しました。体脂肪率(r = 0.92)、下肢筋肉量(r = 0.96)、四肢骨格筋量(r = 0.97)、四肢骨格筋量指数(r = 0.93)、骨ミネラル含有量(r = 0.88)、骨密度(r = 0.81)です。これは、DXAがある人の体脂肪が高いと測定したとき、SA201も対応する結果を得ることを意味します。ある人の筋肉量が豊富であるDXAが示すとき、SA201も同様に測定可能です。つまり、SA201とDXAの体組成測定技術の原理は異なるものの (SA201は電気抵抗、DXAはX線を利用)、同じ生理学的事実を測定しているのです。
なぜ細胞内水分量、細胞外水分量、総体水分量の部分はInBodyのみを比較対象とし、DXAとは比較しないのか?
なぜ細胞内水分量、細胞外水分量、総体水分量はInBodyのみを比較対象し、DXAとは比較しないのか、不思議に思割れるかもしれません。DXAの協力が得られないのでしょうか。
そういうわけではありません。DXAの測定原理は、異なるエネルギーのX線を人体組織に照射し、組織密度の違いに基づいて骨格、脂肪、除脂肪組織(lean tissue)を区別するものです。DXAはこれら3つの主要組織の質量と分布を正確に測定できますが、除脂肪組織内の水分とタンパク質をさらに区別することはできず、ましてや細胞内または細胞外の水分を細分化することはできません。例えるなら、どれだけ精密な秤で、バッグの重さは測れたとしても、中に何本のペン、何枚のレシート、何枚のコインが入っているかまではわからないようなものです。秤が悪いのではなく、それが専門分野ではないのです。
それに対して、BIA技術の測定の核心は水分です。人体における生体電流の伝導は主に体液中の電解質に依存しています。低周波電流は細胞膜を透過できず、細胞外液でのみ伝導します。高周波電流は細胞膜を透過でき、細胞内外液の両方で伝導できます。異なる周波数の電流によって生じるインピーダンスの差を利用することで、BIA装置はまず総体水分量を推定し、次に低周波電流のインピーダンスに基づいて細胞外水分量を算出し、最後に全身総水分量から細胞外水分量を差し引いて細胞内水分量を求めます。
したがって、SA201の水分測定機能を検証する際、我々は同じBIA技術を採用し、すでに検証済の専門機器であるInBody770を使用しました。水分測定を比較するなら、やはり同門の兄弟弟子と切磋琢磨する必要があるのです。
BIA技術の物理的基礎はすでに確立されていますが、新しい機器はそれでも電極の配置位置は正確か、測定周波数の選択は適切か、アルゴリズムは調整されているか、実際のオペレーターが使用して正確な結果が得られるか、といったことを証明する必要があるのです。
研究結果は、SA201が参照機器と「変化傾向」が一致するだけでなく、「絶対値」も高度に一致していることを示しました。これは、SA201が「変化の追跡」(例:減量期間中に体脂肪が減少しているか)だけでなく、「絶対評価」(例:現在の筋肉量は十分か)にも使用できることを意味します。本研究は台湾地域で実施され、台湾人の測定にSA201を使用した場合の信頼性を検証しました。
もちろん、どんなに正確な機器も、仕事帰りのラーメンを止めることはできません。しかし少なくとも、SA201に乗れば、正直な数値としてあなたに警告してくれるでしょう。先週の3回の夜食さえ、体はすべて覚えているのです。